厚いのに“速くなるほど軽い”感覚.ASICS Magic Speed 4レビュー
リード:サブ4〜サブ3を狙う読者へ.ジョグでは硬いのに,テンポに上げた瞬間スッと前に転がる――そんな“練習寄りスーパー”を探しているなら本稿が役に立つ.実測重量やスタック高のばらつき,不確かな点も含めて,MS4の設計思想と走りの核心をやさしく解きほぐす.(Doctors of Running, 2024-06-13/RoadTrailRun, 2024-05-31)
概要とスペック
重量は約242g(US9相当,実測報告)で,クラスの厚底としては軽い部類である.ドロップ8mm,スタック高は43.5/35.5mmという報告がある一方,ラボ実測で42.5/32.9mmという値もあり不確かである.ミッドソールはFF BLAST PLUSをベースに,前足部にFF BLAST TURBOを積層,フルレングスのカーボンプレートを内蔵する.価格は$170前後である.数値の意味としては「軽めの厚底に硬い芯=低速はカチッ,高速は伸びやすい」という乗り味につながる.(Doctors of Running, 2024-06-13/RunRepeat, 2024-08-01/Running Warehouse, 2024-08-01)
設計思想 × バイオメカ(400〜600字)
MS4の設計は「厚いのに安定して速いテンポを刻ませる」である.分厚いミッドソールは,例えるなら硬めのトランポリンである.深く沈んで“ふわふわ”ではなく,荷重を掛けた分だけ素早く戻す反発で脚の上下動を抑え,リズムを前に押し出す.ロッカー形状はゆりかごのように接地の切り替えを早め,腰が落ちにくい.フルレングスのカーボンプレートはテコとなって中足部を安定させ,MTP関節(足趾の付け根)周辺の無駄な曲がりを減らすことで推進へ仕事を振り分ける.結果として,ジョグでは剛性が勝って「硬い板の上」の印象を与えるが,テンポ〜閾値域では脚の返りが揃い,接地時間が詰まりやすい.厚底は本来不安定になりやすいが,MS4は硬めのベースフォームとプレートの芯がブレのベクトルを収束させ,直進安定を確保する思想である.ただし世界陸連の40mm規定に対する適合は不確かであり,公認レースでの使用可否を重視するランナーは要確認である.(Doctors of Running, 2024-06-13/RoadTrailRun, 2024-05-31/RunRepeat, 2024-08-01)
実走インプレ(500〜800字)
夕方の湿ったアスファルトで,まずキロ6分前後のジョグ.足元は「厚いのにコツコツ」,路面の情報は淡く,反発の立ち上がりは穏やかだ.同じ条件で5:00/kmに上げると,ロッカーが前へ転がる角度を明確に感じ,接地から離地までの“間”が短くなる.さらに4:30/kmまで詰めると,前足部のTURBOがグッと応答して,押し出し→前に置くの連鎖がスムーズになる.濡れた白線やマンホールでもASICSGRIPは粘り,ブレーキの“予兆”が読みやすい.トラックでは剛性が強く,インターバルでリズムを作りやすい一方,力みが入ると接地の角度が先行してしまい,蹴りすぎのフォームになる場面もあった.サイズは概ね“いつものASICS”で良いが,ミッドフットがややタイトで,甲高・幅広は紐のテンションを緩めて合わせたい.踵はしっかりホールドだが,靴下の素材次第で擦れを感じる個体差がある.総じて「ジョグは得意ではないが,テンポ〜マラソンペースで前に進む感覚が噛み合う」一足だと感じた.(Doctors of Running, 2024-06-13/RoadTrailRun, 2024-05-31/Reddit, 2024-09-10)
ここが好き!× ここは惜しい!
好きな点1: テンポに乗せると転がりと反発が揃い,フォームが自然に「前さばき」へ寄る.ペース管理が楽になる感覚だ.(Doctors of Running, 2024-06-13)
好きな点2: 厚底の見た目に反して直進安定が高く,疲れても足元が暴れにくい.ロング走の後半で違いが出る.(RoadTrailRun, 2024-05-31)
好きな点3: グリップと耐久が優秀で,練習用としてコストパフォーマンスが高い.(Running Warehouse, 2024-08-01)
惜しい点1: ジョグ域では剛性が勝ち,足裏の“やさしさ”は乏しい.アップやつなぎには向きにくい.(Believe in the Run, 2024-06-05)
惜しい点2: ミッドフットのタイトさと踵擦れの報告があり,足型相性のハードルがある.(Reddit, 2024-09-10)
10項目評価
ライバルシューズと比較
柔らかく軽快な万能感を求めるならSaucony Endorphin Speed 4が合う.ナイロンプレート×PWRRUN PBでイージーからテンポまで守備範囲が広い.一方,MS4はより硬質でテンポに“ハマる”設計であり,練習効果を感じやすい.(Believe in the Run, 2024-06-05)
最大の保護と“ふわっ”とした長距離の気楽さならNew Balance SC Trainer v3だが,重量は増す.MS4は軽さと反発の立ち上がりでインターバル〜ビルドアップに振れる.(Running Warehouse, 2024-08-01)
使いこなしTips&寿命
紐は甲中央のアイレットで一段緩め→踵ロックが基本だ.前足部はロッカーに任せ,蹴りすぎず「体を靴の上に運ぶ」意識で接地時間を詰めると良い.練習はテンポ走,Mペースのビルドアップ,登りの閾値が相性抜群である.寿命はアウトソールの粒立ちが平坦になり,前足部の“返り”が鈍るのが交換サインだ.練習用で600km前後を目安にしたい.(Running Warehouse, 2024-08-01/Reddit, 2024-09-10)
まとめ
厚いのに安定,テンポで化ける“練習寄りスーパー”がMS4の核心である.購入前はミッドフットのフィットとジョグ適性の割り切りの2点を必ず確認するべきである.(Doctors of Running, 2024-06-13)
要約:テンポ〜閾値で伸びる硬質系スーパー.厚いのに直進安定が高く,雨の路面でも扱いやすい.ジョグは得意ではないため,練習メニューが噛み合う人に勧める.
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